【投球障害と棘下筋の「2つの役割」】肩を安定させるメカニズムと身体の土台|福山市神辺町 いとう治療院

野球のピッチングやバレーボールのアタックなど、腕を高く挙げる「オーバーヘッドモーション」において、肩の痛み(インピンジメントや不安定感)に悩むアスリートは後を絶ちません。

肩の奥には肩を守るための筋肉(インナーマッスル)がありますが、その中でも重要なのが「棘下筋(きょくかきん)」です。この筋肉には、走っている方向が違う「2つの繊維」があり、それぞれで役割が違います。

 1. 棘下筋にある「2つの繊維」の働き


・横走繊維(おうそうせんい)
肩甲骨から真横に向かって走っています。腕の骨を、肩の関節の受け皿の中心へ引き寄せて固定する役割です。特に腕を肩の高さまで上げた時(外転90度)に、関節がグラつかないようにします。
・斜走繊維(しゃそうせんい)
肩甲骨から斜め上に向かって走っています。腕を振る際、腕の骨が上に突き上げられるのを防ぐ役割です。これにより、肩の関節内部で骨同士がぶつかるのを防ぎます。

 2. なぜ「腕を上げたとき」が大事なのか


投球動作のように腕を肩の高さまで上げた状態は、肩の関節が最も不安定になりやすい姿勢です。
この時、この2つの繊維が正しく働くことで、肩の関節は中心に留まり、スムーズに動くことができます。逆に、この筋肉の働きが弱いと、腕を振る動作のたびに肩の中で骨がズレてしまい、それが繰り返されることで炎症や痛みにつながります。

 3. 肩を守るために、必要な「土台」の話

棘下筋の「2つの繊維」が正しく働くためには、肩単体の頑張りだけでは足りません。いくら肩の奥の筋肉を鍛えても、それを支える土台がしっかりしていないと、棘下筋は本来の性能を発揮できないからです。
肩が正しく動くためには、以下の3つの要素が不可欠です。

肩甲骨の安定性:
棘下筋は肩甲骨にくっついています。つまり、土台である肩甲骨がグラグラしていると、筋肉が力を発揮する位置が安定しません。肩甲骨が正しい位置に留まることで、初めて棘下筋は力を出し切ることができます。
胸郭(肋骨周り)の柔らかさ:
腕を高く上げるためには、肋骨や背中(胸郭)がしなやかに動く必要があります。ここが硬いと、腕を上げる時に無理な負担が肩にかかり、棘下筋だけでその負担をカバーしなければならなくなります。
股関節の連動:
投球やアタックの力は、下半身から生まれます。股関節から伝わってきたパワーを肩までスムーズに運ぶには、身体全体の連携が必要です。股関節がうまく使えていないと、肩に過度なブレーキや負担がかかり、結果として棘下筋を使いすぎてしまうことになります。

 4. 肩だけを肩だけを見るのではなく、全体を見る

肩の痛みを抱えるアスリートは、つい「肩の筋肉が弱いからだ」と考えがちです。しかし、実際には棘下筋を含めた肩周りの筋肉が、「身体全体の動きの中で、効率よく使えていない」ことが原因であるケースが大半です。
棘下筋の「2つの繊維」がどのような役割を持っているかを知り、さらにその土台となる身体の柔軟性や連動性を整えること。
この広い視点を持つことが、痛みから解放され、より長く、力強くプレーし続けるための近道となります。まずは自分の身体の土台が整っているか、一度見直してみることから始めてみてください。


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